ARTアート

lie

アーティスト
濱口桜子
コロナの影響下、待機が続いた日常で、子供とマスキングテープアートを試みた、その記録映像。
家の中で繋がっていく、テープ達。私は出産後、絵描きに戻れない。家の中にいる、ただの母になった。貼ってみると気持ちが高揚した。筆を使うよりも、ちぎる、ひっつける、こすりつける、など手の感覚が生きてくる。息子はすぐに飽きて、違う遊びを始める。私だけ、夕暮れどき皆が帰ったあと、公園に取り残された子供のように、テープを貼り続ける。
作家というより、母親、さらに、どんどんとただの子供の自分に戻って行くような気がする。
小さい頃テープを貼るのが、唯一自分の仕事のように感じたことがある。色の付いた丸い小さいテープを貼ってゆく。ぺたりぺたり永遠と貼ってゆく。特に明るい色が好きだった。お母さんが、ご飯というまで。
この世にいるための動作。これで、なんとか存在してもいいかな、と考えていた。息子に、おそるおそる、もう一度テープを渡した。
Close